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【オリジナル創作小説】またわれのたび その16

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前回のお話はこちら
 
 
「そうだ!こまたわれ、一緒に海を見に行かないか?一度本物を見てみたいと思ってたんだ」
 
「海、ですか?いいですね。私も海はまだ見た事ないです」
 
昔農場にいた頃、人間たちが海に遊びに行くという話をしていたのを、またわれは覚えていました。
 
遊びに行くっていうくらいだからきっと、楽しいものがいっぱいあるに違いない。
 
まだ見ぬ海のことを思い、またわれの心は期待と好奇心に弾んでくるのでした。
 
「じゃあ海へ行こう!ところでこまたわれ、海ってどこにあるんだい?」
 
「えっ、えーっと・・・詳しくは知らないですけど、陸の端っこにあるらしいですよ」
 
アタフタしながら、こまたわれが答えます。二人とも見た事のないものを探すのは、なかなかに大変そうでした。
 
でも、難しいからこそ冒険の面白みがあるのかもしれないと、またわれは思いました。
 
「まあ何とかなるだろう。とりあえず歩こうか」
 
「あっ、待ってくださいまたわれさん。今何か、不思議な匂いがしませんでしたか?」
 
「匂い?」
 

 
こまたわれが足を止めて、キョロキョロと辺りを見回しています。
 
またわれも立ち止まり、注意深く周囲に意識を集中させました。すると、確かに何かの匂いがします。
 
「うーん、これまでに嗅いだことのない匂いだなあ。何だろう」
 
「わかりませんが、この匂いの元を辿ってみますか?」
 
「そうだね。何か珍しい食べ物があるかもしれないし、行ってみよう」
 
二人は街道を外れ、匂いの強くなる方向を探しながら歩きだしました。
 
時々立ち止まっては風向きを確かめたり、二人でどっちに進むか相談したりしつつ移動します。
 
やがて、行く先に何やら動く白いものが見えました。よく目をこらしてみれば、それは一本のまたわれ大根でした。
 
「あっ、あんなところにまたわれ大根がいる!」
 
「どうやら僕たちと同じ方向に進んでいるみたいですね」
 
「おーい!ここに仲間がいるよー!」
 
またわれが大声で先を進むまたわれ大根に呼びかけると、その大根は足を止めてこちらを振り向きました。
 
 
次回へ続く