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【オリジナル創作小説】またわれのたび その17 - あたうる興業【ブログ版】
またわれは、先を行くまたわれ大根に声をかけました。
「おーい君、呼び名がないと不便だから名前を教えてくれないか」
「名前なんかないよ。好きに呼べばいい」
好きに呼べ、と言われたまたわれは腕を組んでしばし考えこみます。やがてポン、と手を打つとまたわれ大根に向かって呼びかけました。
「じゃあ今から君の名前はザベンザだ!」
「・・・それは嫌だ。やっぱり自分で決めるよ・・・リンカーと呼んでくれ」
先を歩いていたまたわれ大根、リンカーは深々とため息をつきました。
こまたわれが気の毒な物を見るような目で、リンカーを見つめています。
「またわれさんにネーミングセンスとか期待しちゃダメですよ。ホントにそういう所はテキトーですし」
「いいと思ったんだけどなあ」
そんなやり取りを続けながらも、一行はどんどん森の中を進んでいきます。
最初ほのかに感じる程度だった海の匂いも、進むにつれて濃さを増してきました。
「方向は間違っていない。そろそろだ」
「おお!とうとう海が見られるのか。楽しみ楽しみ!」
「ワクワクしますね」
やがて森の向こうから、明るい光が差し込んできました。
ガサガサと草を揺らして森の外へと飛び出した三人の目の前に広がるのは、ゴツゴツした岩場。
岩場の端まで進むと、眼下に大量の水がしぶきを上げて波打っているのが見えました。
次回へ続く