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【オリジナル創作小説】またわれのたび その7

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前回のお話はこちら
 
 
「ま、またわれさん!この人どうやら、我々のことが見えているみたいですよ」
 
「な、なんだって!?今まで通った人間は、みんな知らん顔して歩いてたぞ!」
 
またわれとこまたわれは、オロオロしながら顔を見合わせました。大根なので毛穴などないはずなのに、どこからともなく嫌な汗が噴き出してくるのを感じます。
 

 
そんな大根二本を唖然としながら見つめていた男は、やがてニヤリと笑うとおもむろにまたわれの頭の葉っぱをがしっと掴んで持ち上げました。
 
「喋って動く大根とは珍しい。こいつらを見せ物にすれば、きっといい金になるぞ」
 
「やめれ!離せ!ぼくをどうする気だ」
 
またわれはジタバタともがいて逃れようとしますが、男の手はしっかりと葉っぱを握っており振りほどくことができません。
 
「そら、もう一本もこっちへ来い!」
 
男はこまたわれも捕まえようと、空いているもう片方の手をぬうっと伸ばしてきました。
 
しかしこまたわれは小さくて素早いので、さっと近くの茂みに飛び込んで逃れます。
 
「あっ、こいつ!」
 
「こまたわれ、きみだけでも逃げろ!」
 
またわれがそう叫んで、ひときわ激しく暴れました。
 
男がまたわれに気を取られているうちにこまたわれはガサガサと茂みを揺らし、素早く木の間や草の陰を移動して逃げ去ります。
 
「くそっ、小さいほうには逃げられたか。・・・まあしかし、この変な大根は手に入れた。こいつだけでも何とかなるだろう」
 
男はまたわれを手にぶら下げたまま、街道の先へと歩いていきます。遠ざかるその背中を、うまく逃げおおせたこまたわれが木の陰からそっと見つめていました。
 
「大変だ、またわれさんが人間に捕まってしまった。なんとかして助けないと」
 
 
次回へ続く