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【オリジナル創作小説】またわれのたび その11

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前回のお話はこちら
 
「あのさあ。見せ物になるのはイヤだけど、僕がグスタフの新しい職探し手伝ってあげるよ」
 
「お前みたいな大根に何ができるってんだ。大人しく見せ物になってりゃそれでいい」
 
「グスタフにはそういう商売は向かないって。大きい街なら、他にいい仕事もあるかもしれないし」
 
「逃げたいから適当な事言ってるだけだろ」
 
またわれの提案も、グスタフには届きません。純粋な善意からの申し出だったのに、信じてもらえないのはなんだか少し悲しいなと思いました。
 
 
 
やがてまたわれとグスタフは、街道を歩きとうとう大きな街へとたどり着きました。
 
通りはにぎやかで、たくさんの人々が行き交っており市場や露店もたくさんのお客であふれかえっています。
 
少し進むと噴水広場があり、手品や大道芸など多くのパフォーマーたちが道行く人たちに大声で呼びかけながら、それぞれの技を披露していました。
 
「よし。ここなら珍しい大根の見せ物もウケそうだ」
 
「みんな堂々としてるね。グスタフに、あんな風に声出して呼びかけとかできるのかい」
 
「や、やってやるさ。見てろよ」
 
グスタフは広場の一角に陣取ると、すうっと大きく息を吸ってから口上を述べはじめました。
 
「ざあ、よでらっしゃい見てらっひゃい。しゃべって動く、珍しいまたわれ大根だよー」
 
出だしの声がかすれている上に少し噛んでいるヘロヘロの声でしたが、それが今のグスタフにできる精一杯なのだという事がまたわれには解りました。
 

 
ちっとも堂々としていないけど、彼なりに新しい仕事を始めようと必死になっているんだ。
 
しかしまたわれはその事を知っていましたが、道行く人々は当然そんな事情など知る訳もないので、自信なさげなパフォーマーは素通りです。
 
グスタフはさらに大きな声で、もう一度呼びかけました。
 
「さあさあ寄っといで!喋れるうえに、ダンスも踊れる珍しい大根だよ!」
 
またわれを掴んだ手を、高々と頭上に持ち上げアピールします。そのうち通りがかった人のひとりが、グスタフに向かって言いました。
 
「大根なんてどこにあるんだい。何も持っていないじゃないか」
 
「え?」
 
 
次回へ続く