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【オリジナル創作小説】またわれのたび その16 - あたうる興業【ブログ版】
またわれとこまたわれは駆けだして、先に歩いていたまたわれ大根に追いつきます。
「やあ、ぼくはまたわれ。こっちはこまたわれ。ぼくたちまたわれ仲間だね、よろしく!」
「どうもこんにちは。よろしくお願いします」
二人の挨拶を聞いたまたわれ大根は少しの沈黙の後、静かに口を開きました。
「・・・何か用?」
「ぼくたちこの変わった匂いの元を探しているんだ。君、何か知らないかい?」
そう問われたまたわれ大根は進んでいた方角へ向き直ると、しばらく匂いを嗅いでいるようでした。
「これは、海の匂いだよ。僕も海へと向かっていたんだ」
海と聞いて、またわれとこまたわれの顔が期待に輝きます。二人でハイタッチをして喜びました。
「海だってさ、こまたわれ!いよいよ本物の海が見られるぞ!」
「海ってこんな匂いだったんですね。新しい発見です!」
はしゃぐ二人をよそに、またわれ大根はさっさと歩きだして先へ進もうとしています。
それを見た二人は、慌ててその後を追いかけました。
「待ってくれ、ぼくたちも海を見てみたいんだ。一緒に行こうよ」
「僕のことは放っておいてくれ」
「でも、行く先は同じなんですからご一緒しませんか?せっかく仲間に会えたんですし」
「・・・じゃあ、ついてきてもいい。けど、少し静かにしてくれないか。僕はうるさいのが嫌いなんだ」
またわれ大根はそう言うと、再びスタスタと歩き出します。二人も後ろからついていきました。
またわれが声をひそめて、隣のこまたわれに話しかけます。
「彼は機嫌が悪いのかい?」
「わかりませんけど、静かなのが好きな人もいますからね。大人しくしてましょう」
次回へ続く