あたうる興業【ブログ版】

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【オリジナル創作小説】またわれのたび その20

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【オリジナル創作小説】またわれのたび その19 - あたうる興業【ブログ版】

 

「知ってるかい?ここは自殺の名所なんだ。ここに来るまたわれ達はみんな自らの命に絶望してて、早く死ねる事だけ願ってる。能天気なまたわれなんて、誰も望んじゃいないんだよ!わかったらさっさとどこかに消えてくれ」
 
リンカーの叫びが、荒海に響きます。それは彼の魂がギリギリの所であげている悲鳴のようだと、またわれは思いました。
 
またわれだというだけで、どうして彼はこんなに苦しまなくてはいけないのだろう。
 
ここへ来るまでにどれほどの苦難が、彼の精神をむしばんでいったのだろう。
 
ぼくにできることは何もないのか。
 

 
集まってきていたまたわれの中の一人が、またわれとこまたわれを横へ押しのけて崖のそばへと進みました。
 
「死ぬ気のないやつはどけてくれ。たくさん後がつかえてるんだ」
 
ゾロゾロと、またわれ達が目の前を横切っていきます。
 
「待ってください!死ななくたって、生きていく術はあります!」
 
「そうだよ諦めるな!頼むから死なないでくれ!」
 
またわれとこまたわれが必死に訴えかけますが、集まったまたわれ達を押しとどめることはできませんでした。
 
「リンカー!!」
 
「・・・生まれ変わったら天使になりたいな。さよならまたわれ、こまたわれ」
 
崖のふちに立っていたリンカーが、海へとその身を躍らせました。
 
その後へ続くように、他のまたわれ達も次々と海へ身を投げていきます。
 
崖下からドボン、ドボンと無慈悲な水音が立て続けに聞こえてくるのがあまりにつらく、またわれは思わず耳をふさぎました。
 

 
「どうして・・・どうして・・・!!」
 
「・・・またわれさん、行きましょう。僕たちは、ここでは必要とされていない」
 
崖のほうへと近づいてくるまたわれ達を横目に見ながら、二人はその場を離れます。
 
真の絶望に染まったものたちには、自分たちが懸命に声をかけても響くものがないのだ。
 
救いたくても救うことのできない命があることを眼前で見せつけられ、あふれた失意が心にシミをつくっていくようでした。
 
 
次回へ続く

 

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