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エッセイ「ぼくのお母さん」その1

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 そう、お袋さんが死んでから二十年以上経ったし、そろそろ執筆してもいいころかな。そういえば生前、お袋が言ってたことなんだけど「 明(あきら)よ、将来、ぼくのお母さんというタイトルで本を書いたら、きっと売れるぞ!」と。
 お袋は、いわゆる破天荒な人だった。正直、息子である私は、お袋は「ただの馬鹿な人」くらいにしか思ってなかった。近年、二児の父親になり、私も育児に関わるようになってから、心情的にお袋の努力、苦労も、少しずつ分かるようになってきた。でも、私は今でも思うが、お袋は他人とは違う個性のある人だった。
 そんなお袋の、面白いエピソードならいくらでもあるな。本当に 本書いたら売れるかどうか、試してやる。天国?にいるお袋よ。色々暴露するからな。このエッセイは、何せ生前、あなたが 許可したことなのだから。
 
 私が覚えている限りの、お袋の最も古いエピソードを思い出してみよう。私が幼稚園に通う前の頃の話しになる。家族構成は、父と母、私、妹の四人家族。父は会社員。母は専業主婦だった。
 お袋の生活スタイルは、お袋が死ぬまで一貫していたな。 太っていた。いつも寝っ転がっていた。枕がわりに茶筒を頭の下に敷いて横になっていた。親父が仕事に行っているときは、 ビールを昼間っからあおっていた。病院で診断を受けていないだけであって、アル中だったと推測できる。
 お袋は毎日酒屋に行って、ビールの大瓶を一本購入していた。酒屋さんからは「毎日、旦那さんの為に、まめにお酒を買っているのね」と言われていたらしい。だが、それはお袋が日中飲む分である。後日、酒屋さんもそれを察知したらしく、嫌味を言われたとお袋は言っていたな。
 ある日、親父が台所からウイスキーを発見。お袋が隠していたものである。親父とお袋の夫婦喧嘩が勃発する。親父がその酒を捨てろと言う。お袋は、なんと一気飲みしてしまった。私は幼少の身ながら、なんて馬鹿な夫婦喧嘩であろうと、滑稽に思ったものだ。
 今にして思えば、酒を飲んでなければ、やってられないお袋の周りの環境が悪かったのであろう。親父は仕事人間で、仕事以外は何もやんない人だったな。親父は家庭の構成員である、妻、子供のことに気を配るということの出来ない人だった。親父の親族、お袋の親族にも気を配ることが出来ない人だった。だからこの家族は、親父の親族にも嫌われ、お袋の親族にも嫌われていたと推測する。
 親父もお袋も、周りの人間に頼るということが下手な人だった。生き方が不器用なのだろう。
 
あたろうでした。