前回のお話
またわれがおおまたわれに聞きました。
「こんなに大きい体なのに、よく今まで人間に見つからず暮らせたなあ。いったいどうやってかくれていたんだい?」
「かくれなくても、人間、気づかない。体の中、すりぬけていく」
それを聞いて、こまたわれが驚きに目を見張りました。
「つまり、人間の目には君の姿が見えていないと。さらに、触れることもできないという事になるわけですよね・・・・・・やはり我々はもう、ただのダイコンではないのか」
「へー。そりゃ面白いね!今度人間を見つけたら、思い切って触ってみようか」
ポンと手を打ってジャンプするまたわれに、こまたわれが厳しい目を投げかけます。
「もし見えてたら危険ですよ!こんな変なヤツがいるって捕まえられて、見せ物にされたら嫌じゃないですか」
「その時はこのすばらしい大根足で、華麗に逃げ切ってみせればいいさ」
腰に手を当て足を高く上げながら、またわれが踊り出します。こまたわれはといえば、その様子を呆れたように見つめながら、深くため息をつきました。
「またわれとこまたわれ、面白い」
ふたりのやりとりを聞いていたおおまたわれが、大きな体を揺らして笑います。フォフォフォフォという低い声と共に、振動がそこらじゅうの山へと響き渡りました。
やがておおまたわれは笑うのをやめると、ふたりにむかって小さな笛のようなものを差し出しました。
「これやる。草で作った笛吹けば、いつでも会いにいく」
「おお!これはいいものをどうもありがとう。新しい仲間に貰った素敵なプレゼントだからね、大事にとっておくよ」
「さて、僕たちはまた旅を続けようと思いますが、おおまたわれはこれからどうするんですか?」
おおまたわれは少し考えた後、ゆっくりと口を開きました。
「ここ、産まれた山。離れる気ない。でも笛吹いてくれれば、歩いて会いにいく」
「そうですか、じゃあいったんここでお別れですね」
「ぼくらはもう行くよ。また会おう、おおまたわれ」
次回へ続く