あたうる興業【ブログ版】

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またわれのたび その3

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またわれとこまたわれは、山道を走りました。近づくにつれ、何だかよくわからない白い柱はますます大きさを増していきます。
 
ガサガサと草のしげみをかきわけて進み、とうとう柱の根本までたどりつきました。
 
「すごい大きさだなあ。ちょっとさわってみよう」
 
またわれが、白い柱の片方をちょいちょいと撫でました。つるつるすべすべした感触は、大根の皮のようです。
 
「なんだか我々の皮っぽい触り心地だよ、こまたわれ」
 
「近くでよく見てみると、ヒゲ根もちゃんと生えてるようですね」
 
柱の両方から、ひょろひょろとした白い枝のようなものが伸びています。なるほどそれは、大根のヒゲ根と言われればそう見えるものでした。
 
「やっぱりこれ大根なんだ。しかもまたが割れてるよ!我々の仲間じゃないか。オーイ!」
 
またわれは、せいいっぱい上のほうを向きながら大声で呼びかけます。
 
すると2本の白い柱がもぞりと動き、またわれとこまたわれの上に影がさしました。
 
この巨大なまたわれ大根が、一生懸命体を曲げて足元を覗き込んでいるからでした。
 
「だ~れ~?」
 
低く、大地を振るわせる声が山全体に響き渡ります。またわれは地面が揺れるのも恐れず、いつも通りの気さくな口調で話しかけました。
 
「やあ!ぼくはまたわれ、こっちはこまたわれ。ふたりで旅をしているんだ。君の名前は何だい?」
 
巨大なまたわれはしばらく考えるように動きを止めると、また低い声でゆっくりと返事をします。
 
「なまえ、知らない」
 
「そうか、それは困ったなあ。呼びにくいから、おおまたわれって名付けてもいいかい?」
 
「それで、いい」
 
こうして巨大なまたわれには、おおまたわれという名前がつきました。
 
こまたわれも、小柄な体からせいいっぱい大きな声を出して、おおまたわれに問いかけます。
 
「君はどうして、こんな所にひとりでいるんですか?」
 
ひとつ質問されるたびに、しばらくの沈黙が訪れます。おおまたわれはしゃべるのも考えるのも、ゆっくりなようです。
 
やがておおまたわれは、またゆっくりと語りました。
 
「やまのはたけ、埋まってた。200ねん。気づいたら、ひと、いなかった」
 
ふむふむと、こまたわれが腕組みをしながら何か考えています。
 
「うーん・・・・・・つまり君は、畑に二百年も忘れ去られて埋まっていたと。こんなに大きくなったのは、そのせいかもしれませんね」
 
 
つづく