あたうる興業【ブログ版】

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【オリジナル創作小説】またわれのたび その23

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【オリジナル創作小説】またわれのたび その22 - あたうる興業【ブログ版】

 

「呼ばれたから来た。またわれ、こまたわれ久しぶり」
 
「おおまたわれも元気だったかい?ぼくらも何とかやってるよ」
 
またわれが気さくに片手をあげて挨拶する横で、こまたわれは少し考えるそぶりをしてからおおまたわれに話しかけます。
 
「今回来てもらったのには訳があるんです。実は・・・」
 
こまたわれは先刻見た死に向かうまたわれ大根たちの、一部始終を聞かせました。
 
黙ってじっと聞いていたおおまたわれは、全て話し終えた様子を確かめるとおもむろに口を開きます。
 
「なかまがそんな風に死ぬの、かなしい。おおまたわれも、なかまのために何かしたい」
 
「そう思うだろう?だからぼくはみんなが安心して暮らせる村を作ることにしたんだ。見ててくれよ、完成したらきっとおおまたわれも呼ぶからさ」
 
またわれはすっくと背を伸ばし、胸をドンと叩いて自信をアピールします。それを見たおおまたわれは辺りをキョロキョロと見回してから、大きな岩の所で視線を止めました。
 

 
「あの岩、りっぱな岩。おおまたわれはあれで、なかまの魂をとむらう」
 
「なるほど、慰霊碑を作るんですね。いい考えだと思います!死んでいった彼らもきっと浮かばれることでしょう」
 
こまたわれが手を叩いて、明るい笑みを浮かべます。
 
重く冷たい現実を前にしても、見捨てられたまたわれ大根たちのために祈ってくれる仲間がいる事を、とても喜んでいるようでした。
 
「おおまたわれの祈りなら、彼らの所にも届くだろうさ。さあこまたわれ、僕らも新天地探しを始めようか」
 
「そうですね、またわれさん。おおまたわれ、いずれ慰霊碑の元へお参りにいきますのでその時はよろしくお願いします」
 
「山のいちばんきれいな所に岩置く。まいにちお水あげる。岩もみがく。ふたりも、気を付けて」
 
おおまたわれは大きな岩を軽々とつかんで持ち上げると、来た時と同じようにドシン、ドシン足音を立てながら去っていきました。
 
それを見届けると、二人も森を抜けるべく歩き出しました。
 
次回へ続く
 
 

 

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